富士市では、市内東部を走る地方鉄道「岳南鉄道線」を運行する「岳南電車株式会社(以下、岳南電車)」に対して、平成16年度以降公的支援を行っています。
岳南電車は市内東部の9.2キロメートル・計10駅を結ぶ地方鉄道であり、昭和24年の鉄道事業開業以来、70年以上にわたって市民の「くらしの足」として、また、工業製品や原材料等の輸送路として、地域に根ざし、本市発展の一翼を担ってきました。
近年では、夜景電車等の企画や地域との協働によるイベント開催等、特色ある取り組みを通じて、「岳南電車のあるまち富士市」のシティプロモーションや観光面においても大きな役割を果たしています。
年月 | できごと |
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昭和24年11月 | 鈴川駅(現:吉原駅)〜吉原本町駅間が開業 |
昭和28年1月 | 全線開通 |
平成25年4月 | 路線の運営を岳南鉄道株式会社から岳南電車に移管 |
平成26年7月 | 日本夜景遺産に認定 |
平成29年2月 | 日本百名月に認定 |
令和3年6月 | 本吉原駅(プラットホーム・上屋)が国の登録有形文化財に決定 |
市は、岳南電車に対し、貨物輸送の低迷を理由に平成16年度から年間1,000万円、平成23年度は2,000万円の公的支援を行いました。
貨物輸送が廃止となり、旅客輸送のみとなった平成24年度以降は「岳南電車は、本市において必要な社会基盤であるため、事業者の自助努力と行政の適切な関与を前提に、市民、事業者、行政が一体となって支えていく」という考え方に基づき、これまでに第1クール(平成24年度~平成26年度の3年)、第2クール(平成27年度~平成29年度の3年)、第3クール(平成30年度~令和4年度の5年)の支援を行ってきました。
補助金額は、国が作成した「鉄道プロジェクトの事業評価マニュアル2012」に基づき、バスや自動車と比較した場合の所要時間の短縮効果など、富士市にもたらす社会的便益を「公益」として金額に換算することで算出しています。
第3クールのこれまでの支援の妥当性を検証した結果、平成30年度から令和4年度までの5年間における社会的便益の平均が、補助金額の6,200万円を上回っていることを確認しています。
検証結果の詳細は、下の添付ファイルをご覧ください。
年度 | 平成16 | 平成17 | 平成18 | 平成19 | 平成20 | 平成21 | 平成22 | 平成23 |
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補助金額(千円) | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 20,000 |
年度 | 平成24 | 平成25 | 平成26 | 平成27 | 平成28 | 平成29 |
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補助金額(千円) | 65,000 | 65,000 | 65,000 | 62,000 | 62,000 | 62,000 |
年度 | 平成30 | 令和元 | 令和2 | 令和3 | 令和4 |
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補助金額(千円) | 62,000 | 62,000 | 62,000 | 62,000 | 62,000 |
臨時支援補助金(千円) | なし | なし | なし | 21,824 | 15,689 |
名称 | 効果内容 |
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(1) 所要時間短縮便益 | バスや自動車と比較した場合の所要時間の短縮効果 |
(2) 費用低減便益 | バスや自動車と比較した場合の利用者が払う費用の削減効果 |
(3) 道路交通事故削減便益 | 自動車交通の削減による交通事故の削減効果 |
富士市にもたらされる社会的便益(検証結果詳細) (PDF 54KB)
平成24年の補助金の増額以降、岳南電車は、これまで以上の最大限の効率化とサービスの向上に取り組むとともに、各種イベント開催に加え、幅広い営業活動の展開など、企業努力を継続することで、交通インフラとしてだけでなく、本市の観光・シティプロモーションに寄与してきました。
こうした活動によって、利用者数は右肩上がりとなり、平成30年度には86万人と、平成24年度と比較し、10万人増加しました。
しかし令和元年度以降、新型コロナウイルス感染症の影響により利用者が大幅に減少し、令和4年度においても、コロナ前の水準には到底回復していません。
収入が減少する一方で、老朽化施設の修繕や定期的な法定検査など安全・安心な運行のために必要な経費はこれ以上削減することができない状況となったことから、令和3年9月、岳南電車から市に対し、公的支援継続の要望書が提出されました。
また、富士商工会議所や富士市町内会連合会、その他、多くの団体からも岳南電車への公的支援の継続を望む要望書が提出されました。
富士商工会議所、富士市町内会連合会、まちの駅ネットワーク、岳南電車サポーターズクラブ、吉原商店街振興組合、タウンマネージメント吉原、市民10団体(富士つけナポリタン大志館、本吉原駅劇場実行委員会、923ネットワーククラブ、フジパク富士山博覧会、オール富士さん!、富士市民岳鉄イカシ隊、フジレールクラブ、吉原マネジメントオフィス株式会社、まちづくりプロジェクトsee-through、紙っと!プロジェクト)
こうした要望を受け、市は、「富士市公共交通協議会」に「地方鉄道分科会」を設置して支援の妥当性などについて検討を重ね、令和5年度以降の支援の方向性や内容を決定しました。
(1)社会的便益、(2)利用者数・収支実績、(3)行動計画の履行状況、(4)地域と一体となった取組と本市の公共交通ネットワークにおける岳南電車の位置付けを検証した結果、今後も市民の「暮らしの足」として不可欠な交通手段であることから、一定の条件を付与し、令和5年度以降も公的支援を継続することとします。
~ 公的支援の継続にあたっての条件 ~
(1)これまで以上の自助努力を行い、利用促進策による増収を図ること。
(2)市民、事業者、行政のオール富士市で活性化に向けた取組を継続すること。
(3)岳南電車は、経営改善や地域共生型の交通サービスの提供に向けた行動計画を策定し、確実に履行すること。
なお、令和5年度以降の公的支援の継続にあたっては、富士市公共交通協議会を始め、産業界・各種団体・市民から寄せられた声を尊重するとともに、令和元年6月に策定した「富士市公共交通利用促進条例」に則すこととします。
「富士市公共交通利用促進条例」抜粋 基本理念(第3条) 公共交通の利用の促進は、市、市民、事業者及び公共交通事業者の相互の理解と連携の下に協働して行われなければならない。 市の責務(第4条) 市は、公共交通の利用の促進に関する施策を実施するため、必要な体制を整備するとともに必要な財政措置を講ずるものとする。 公共交通事業者の責務(第7条) 公共交通事業者は、公共交通の利用の促進に関する事業を実施するものとする。 |
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年度 | 令和5 | 令和6 | 令和7 | 令和8 | 令和9 |
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営業収益(見込、千円) | 145,336 | 147,623 | 150,112 | 152,569 | 155,106 |
営業費用(見込、千円) | 232,014 | 238,833 | 246,941 | 222,777 | 227,671 |
欠損額(見込、千円) | 86,678 | 91,210 | 96,829 | 70,208 | 72,565 |
補助金額(上限、千円) | 78,800 | 83,000 | 88,100 | 63,800 | 66,000 |
※補助金額は、欠損額から9%を除いた金額を上限額としています。
市は、公的支援の継続にあたり、岳南電車の行動計画等の履行確認におけるモニタリング制度の導入、公的支援の効果検証の実施、庁内横断的な岳南電車への支援に取り組みます。
新たに導入するモニタリング制度とは、岳南電車の行動計画等の進捗状況の確認を行い、確実な計画履行を目指すものであり、このモニタリング結果は、毎年度、富士市公共交通協議会にて確認され、公的支援の効果を検証しています。
令和6年5月30日に開催した富士市公共交通協議会において、令和5年度の岳南電車の行動計画における個別指標の実績値等について協議し、着実に計画が履行されていることが承認されました。
令和6年度第1回公共交通協議会資料抜粋(令和6年5月30日) (PDF 2036KB)
~ 公的支援の継続にあたっての条件(再掲 )~
(1)これまで以上の自助努力を行い、利用促進策による増収を図ること。
(2)市民、事業者、行政のオール富士市で活性化に向けた取組を継続すること。
(3)岳南電車は、経営改善や地域共生型の交通サービスの提供に向けた行動計画を策定し、確実に履行すること。
公的支援の継続にあたっての条件(3)に基づき、岳南電車は、経営改善や地域共生型の交通サービスの提供に向けた行動計画を策定し、それを確実に履行することとされました。
以下は、岳南電車が作成した行動計画の抜粋です。計画の全体につきましては、下の添付ファイルをご覧ください。
富士市から次の5カ年の公的支援を受けるにあたり、地域・社会への信頼とこの行動計画を常に企業経営の念頭におきながら、お客様への安全性、利便性、快適性の継続を実行するとともに、社会基盤である公共交通の役割だけでなく、富士市観光周遊の促進、加えて富士市の魅力を全国に向けて発信するシティプロモーション活動の象徴的な役割を担う地域共生型のサービス企業をめざします。
5つの目標
・目標1 市民の足としての利用促進施策の継続
・目標2 観光利用施策による地域社会との共存共栄
・目標3 安全第一の経営方針と経営努力の継続
・目標4 市民・各種団体・行政との連携活動の継続
・目標5 シティプロモーション活動等の積極展開
この行動計画を推進することで、これからも末永く市民・利用者の皆様に愛される岳南電車の基礎を築いてまいります。また、新たに導入される「モニタリング制度」では、当社独自のセルフモニタリングや行政や第三者機関によるモニタリングを通じて、この行動計画の各種進捗状況の確認を行い、確実な計画履行を目指します。なお、経営環境や利用実態等の変化に応じ関係者と協議の上、必要な見直しを行い、状況に即したフレキシブルな運用を進めてまいります。
行動計画及び個別指標を達成することにより、下表の利用者数の達成を図ります。
岳南電車第四次行動計画(全て) (PDF 252KB)
岳南電車への令和5年度以降の公的支援につきましては、富士市議会へ報告を行っています。
その際に使用した詳細な資料は、次の添付ファイルをご覧ください。
全員協議会資料(令和4年9月1日) (PDF 1477KB)
富士市役所 都市整備部 都市計画課 公共交通推進担当
電話:0545-55-2904