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中小企業の技能を後世へ~製造業デジタル技能伝承~
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- 特集
富士市には896の製造業の事業所があります。そのうちの98%が従業員300人以下の中小企業(中小製造業)です。
市区町 | 事業所数 | 従業者数 | 製造品出荷額等 |
---|---|---|---|
従業者規模別 | (人) | (万円) | |
富士市 | 896 | 34,578 | 151,356,424 |
1~3人 | 113 | 254 | 389,533 |
4~9人 | 250 | 1,592 | 3,215,011 |
10~19人 | 182 | 2,509 | 6,282,757 |
20~29人 | 106 | 2,601 | 6,516,195 |
30~49人 | 84 | 3,190 | 11,852,200 |
50~99人 | 100 | 6,752 | 23,754,648 |
100~299人 | 49 | 8,834 | 52,534,559 |
300~499人 | 7 | 2,555 | 14,577,670 |
500~999人 | 1 | 652 | x |
1000人以上 | 4 | 5,639 | x |
中小製造業は長年受け継がれてきた固有の技術が多数あります。しかし、近年では中小製造業全体で人手不足という課題があり、特に若い世代の人材確保が難しく、固有の技術の伝承がスムーズにいかないという課題があります。
そこで富士市ではコニカミノルタジャパン株式会社及びコニカミノルタ静岡株式会社とともにデジタルを活用して技能の伝承をスムーズにする実証を進めてきました。
令和4年から6年にかけて3年間、この実証に携わったコニカミノルタジャパン株式会社の田村さんにお話を伺いました。
コニカミノルタ×富士市
コニカミノルタはカメラ・フィルムを発端とした創業150年の企業です。
現在は、長年かけて培った、独自のImaging技術を軸に、高精細な印刷物や業務プロセスの課題を「見せる」情報機器事業や、疾病やがんの兆候を「診せる」ヘルスケア事業など、人々の想いに応えるかたちで事業領域を拡大していき、今ではグローバルメーカーとして世界中の人々の「みたい」に貢献し続けています。
私が所属しているICW(Intelligent Connected Workplace)事業部は、人と情報がつながり、いつでもどこでもだれとでも価値創造ができるスマートな職場環境をお客様に提供する部署です。
様々な人やナレッジをデジタルでつなげ、データの価値を最大化させるサービスを構築し、ワークプレイスのDX促進を進めています。
このようなコニカミノルタのデジタル技術で地域が抱える課題の解決をサポートしていくのが私どものミッションであり、富士市が抱える中小製造業における技能伝承という課題に対し、3年間の時間をかけて富士市内企業で実証を行ってきました。
センサーを活用した技能の数値化
1年目の令和4年度は触覚、視線、音、脳波、姿勢動作センサーを活用して、ベテラン熟練者の技能と若手学習者の技能を数値で表現化し、比較することで、どこで技能の差が出るかについての検証を行いました。
これまで熟練者から学習者への技能の伝承は、手本を見せることと口頭で感覚を伝えるだけだったものが、力の入れ具合や指先の動きなどをより具体的に伝えることができ、効率よく伝承することができました。
このため、製造業の技能伝承にデジタルを活用することは有効であると確証が持てました。
一方でセンサーの解析等にコストと時間がかかり、中小企業としての負担が相当なものになることも判明しました。
AIを活用した技能マニュアル
2年目の令和5年度は、ベテラン熟練者へインタビューを行い、そこにAIを活用することで技能に関するマニュアルが容易に作ることができないかの検証を行いました。専門用語や固有名詞の御認識等があったが、想定以上に高精度なマニュアルを作成することができました。特に人間の感覚やコツなど、今まではマニュアルに含まれなかった情報も抽出することができ、AIを活用した技能マニュアルは、中小製造業の技能の伝承に効果的であり、かつコストも抑えられることが判明しました。
しかし、高度な技能の部分についてはインタビューだけでは説明が難しく、対象者が実際の工具や写真を手元に置きたがるなど、口頭の文字だけでの限界も感じました。
このような課題に対し、3年目の令和6年度は動画から作業の動きを分析してマニュアルに落とし込むなど、さらに実用性を高めました。またトラブル対応のフロー図も同様にインタビュー形式からAIがフロー図を作成するなど、新しい試みも行いました。
このように製造業の技能をデジタル技術を活用して伝承していくことは、人手不足対策のみならず、業務の効率化においても非常に有効であることを示すことができました。
増える外国人労働者への対応
今回、技能マニュアル作成についてAIを活用したことは、今後も増え続けると予想されている外国人労働者への有効性も確認されました。
AIであれば、世界で実用的に使用されているほぼ全ての言語に対応することができます。外国人労働者は日本語のレベルがまちまちで、こういったツールは非常に役立ちます。翻訳したマニュアルを日本語が理解できる外国人労働者に見てもらったところ、ほぼ問題がありませんでした。デジタルを活用して、外国人労働者も積極的に活用することで人手不足対策になる可能性があります。
3年間このような実証が行えたことは、弊社にとっても富士市にとっても有益でした。今後も富士市のみならず、日本の様々な課題にデジタルの力でアプローチしていきたいと思います。
実は令和7年度は伝統芸能の承継にもチャレンジします。伝統芸能も後継者がおらず、全国的な課題だと思いますので、どのような結果がでるか楽しみであり、何とか貢献していきたいと思います。
最後になりますが、実証に御協力いただいた企業の皆様、ありがとうございました。
市内企業で本事業に御興味がある方は、富士市地域産業支援センターまでお問合せください。