「はたらく」の側に、いつも富士市。 > 記事一覧 > 歴史ある現場にITの風。属人化を排し、組織として進化し続ける富士木材の現在地。
歴史ある現場にITの風。属人化を排し、組織として進化し続ける富士木材の現在地。
ここから本文です。
- 企業紹介
富士市の伝統ある老舗企業が、デジタルの力を借りてどのように「次の一手」を打ったのか。富士木材株式会社の取締役杉田剛さんに、その詳細な歩みと「ミエル化」がもたらした組織の変化について、じっくりとお話を伺いました。

大正から続く歴史と、地域に根差した多角的な事業展開
富士木材株式会社は大正2年(1913年)に個人創業として産声を上げ、今年で113年目を迎えます。ここ富士市の地で、地域の皆さまや地元企業様に支えられながら事業を続けてきました。
現在は大きく分けて、法人様向けの「包装資材事業」と、一般消費者様向けの「住宅事業」の二本柱で展開しています。包装資材事業の中では、木製パレットや木箱といった梱包材を作る「木材事業」、紙器工場での「段ボール製造事業」、そしてお客様の荷物をお預かりして保管・荷役・出荷を行う「倉庫事業」を行っています。
弊社の最大の強みは、これらを組み合わせた「ワンストップサービス」です。梱包資材の製造から、それを倉庫に納め、お客様の製品を梱包し海上コンテナにバンニング(積み込み)して物流に乗せるところまで、一つの営業窓口ですべて完結できる体制を整えています。
近年では時代の変化に合わせ、輸出用として水に強く軽い「強化段ボール」の製造や、三次元CNCルータを用いた高度な木材加工など、お客様の多様なニーズに応える柔軟なモノづくりにも力を入れています。
担当者の「暗黙知」に依存していた営業活動の限界
長く事業を続けてきた一方で、社内には大きな課題がありました。それは、営業現場における「属人化」です。
これまで弊社の営業活動は、個々の担当者の経験や記憶といった、いわゆる「暗黙知」に強く依存していました。どのお客様に、いつ、どのような提案をしたのか。どんな課題をお持ちで、案件がどこまで進んでいるのか。そうした顧客対応や案件管理が担当者個人の中に留まっており、会社全体として十分に情報を共有・活用できていないという反省があったのです。
転機となったのは、産業支援センター「Beパレットふじ」や静岡県よろず支援拠点のコーディネーターの方々と面談する機会をいただいたことです。コンサルティングを通じて現状業務の棚卸しと業務フローの整理を行っていく中で、改めて「営業情報のミエル化」こそが、弊社が次のステップへ進むために不可欠な課題だと浮き彫りになりました。
そこで、富士市の「業務ミエル化補助金」を活用し、ITツールを用いた本格的な営業支援システムの構築に踏み切ることにしたのです。
「単なるツール導入」ではなく、営業技能を「組織の資産」へ
本事業で私たちが目指したのは、単に便利なシステムを入れることではありません。「製造業として長年培ってきた営業技能を、組織全体の資産として可視化すること」です。
具体的には、クラウド型の営業支援システムを基盤として導入し、大きく3つの「ミエル化」に取り組みました。
1.案件・商談の可視化による「営業業務の標準化」 これまで担当者ごとにバラバラに管理されていた顧客情報や商談履歴を、統一された業務フローに沿ってシステム上に蓄積するようにしました。これにより、個人の判断プロセスが標準化され、誰が担当しても同じ質の営業活動や顧客対応ができる環境が整いました。経営層も含め、会議に出席するメンバー全員がリアルタイムで案件の進捗を共有できるようになったのは大きな前進です。
2.データダッシュボードによる「経営数値のリアルタイム化」 弊社の基幹システムに蓄積されている売上や利益のデータを、分かりやすく視覚化するツールも導入しました。生産拠点別や担当者別の実績が、表やグラフで即座に把握可能となったのです。これまでは集計に手間がかかっていましたが、今では知りたい情報をすぐに見ることができるため、経営判断のスピードが劇的に向上しています。
3.名刺管理アプリを用いた「接点情報の資産化」 名刺情報についても、スマートフォンでスキャンするだけで自動的にシステムへ登録される仕組みを構築しました。手入力の作業を大幅に削減しつつ、業種や企業別の顧客情報を組織的に検索・活用できるようになりました。営業先のお客様だけでなく、資材の調達先などの名刺も一元管理することで、担当者が不在でも「誰に連絡を取ればよいか」がすぐに分かるようになりました。
事務工数の大幅削減と、18時には静まり返る事務所
導入から数ヶ月ですが、業務効率化の成果はすでに数字として表れています。
業務プロセスのミエル化と、会議資料作成の自動化(システムを見れば最新情報が分かるため、わざわざ資料を作る必要がなくなったこと)により、関連する事務工数を「月間15時間から9時間」へと削減することができました。当初の目標である7.5時間にはまだ到達していませんが、社員の操作の習熟や、システムのさらなる改善を進めることで、早期の目標達成を目指しています。
また、働き方にも目に見える変化が起きています。営業担当者にはモバイル端末を支給し、お客様とのアポイントの待ち時間などの「隙間時間」に、外出先から情報を入力できるようにしました。
その結果、わざわざ事務作業のために会社に戻って遅くまで残業する、といったことが減りました。いかに時間内で仕事を終わらせるかという意識が浸透し、今では定時を過ぎた18時頃には、事務所にはほとんど誰も残っていないような状況です。
創出された時間を「顧客との対話」と「地域貢献」へ
営業業務の流れや判断基準が可視化されたことで、副次的な効果も生まれています。新任担当者への教育や業務の引き継ぎにかかる時間が短縮されたことです。また、システムを通じて製造現場とも情報が連携しやすくなり、より迅速な顧客対応が可能となりました。
IT化によって創出された時間は、製造業としての本来の競争力強化、つまり「お客様との対話」や「新たな提案活動」に充てていきたいと考えています。
同時に、弊社では地域に開かれた会社づくりにも力を入れています。地元の小学校での出前授業で子供たちに木工の楽しさを伝えたり、工場を開放して「木工フェス」を開催し、フォークリフトの乗車体験やワークショップを楽しんでいただいたりしています。
デジタル技術で業務を効率化しつつ、空いた時間で地域社会と温かいコミュニケーションをとる。そうした活動を通じて、弊社の魅力を知っていただき、将来的に「この会社で働きたい」と思ってくれる若い人材が増えれば、これほど嬉しいことはありません。
100年以上にわたって培ってきた地域の皆様からの信頼を、デジタルの力でさらに強固なものにし、次の世代へと繋いでいく。富士木材の挑戦は、まだ始まったばかりです。

【企業紹介】富士木材株式会社
大正2年創業。富士市大渕に本社を置く。木製パレット・強化段ボール等の梱包資材製造から倉庫業まで、物流の「ワンストップサービス」を一貫して行う。地元の「富士ひのき」を活用した住宅事業にも定評があり、地域に根差したモノづくりと環境負荷低減の両立に取り組んでいる。
富士木材株式会社 公式サイト:https://www.ipac-fujimoku.co.jp/fjmkwp/
本事業(富士市中小製造業・業務ミエル化補助金)は国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用した事業です。










