渡辺市長は、3月定例市議会で昭和63年度に向けての施政方針演説を行いました。
この中で、本年度は、新富士駅の開駅をインパクトとして個性豊かで主体性のあるまちづくりを目標に、「21世紀に向けての総合交通体系の確立を図る交通ネットワークの整備」「ふるさと文化を創造する環境の整備」「活力ある都市を構築していく産業振興基盤の整備」「富士愛鷹山麓地域環境管理計画の策定」の4点を重点に市政運営を進めていきたいと強調しました。
そこで、市長の施政方針演説の概要と昭和63年度予算のあらましを紹介します。
交通ネットワークの整備
富士市の都市交通体系の整備については、都市計画街路を重点に着々と整備を進めています。
昨年12月には、源平橋の完成により、新富士駅と東名インターとを結ぶ富士見大通りが開通しました。富士見大通りは市内の道路交通に飛躍的な利便性をもたらしましたが、新富士駅の影響を受けて一層の混雑が予想されます。
さらに第二東名や富士南麓道路など重要幹線が計画されている現在、これら幹線とネットワークする市内重要幹線道路の整備が求められる現状となってきています。
具体的には、新富士駅の及ぼす交通体系の影響を受けとめ、国道139号と国1バイパスをつなぐ藤間前田線の国庫事業採択と早期着工に向けて、最大の努力を払います。
国道1号バイパスについても、本市の広域交通の九割以上が東西方向であることから、通行車両がますますこの道路に集中する傾向にあります。このままでは、沿線の住民はもとより、市民の利便性の確保にも心配があります。
このため、国1バイパスの高架化は重要な課題として受けとめ、この具現化を関係機関に強く要望していきます。
一方、本市の北部を通る広域幹線道路として富士南東道路がクローズアップされてきています。
この実現については、従前から国・県に強く要望してきたところですが、県では沿道の土地利用、環境保全、景観等を考慮した中で整備の方針が固まりました。新年度から県道富士裾野線の機能を高める拡幅改良整備事業が、着手されます。
また、現在の東名高速道路の交通量を緩和するため、第二東名高速道路の建設が近い将来浮上してきます。本市はこのルート上に位置するものと考え、工業都市富士市として第二東名富士インターの設置などを関係機関に強く働きかける必要性があります。
ふるさと文化を創造する環境の整備
新年度は長年の懸案でありました文化会館の設置、短期大学の誘致が、いよいよ実現に向けて発進する年となってきます。
新文化会館は、既存の吉原市民会館及び富士文化センターにかわる文化施設として、一昨年来、そのあるべき姿について調査研究をしてきました。
本年1月には文化会館建設市民懇話会から貴重な提言が寄せられました。さらに、建設場所も去る2月の文化会館建設特別委員会で、中央公園南側に決定されました。
新年度は用地の確保に向けて、鋭意努力し、基本構想確定後ただちに新会館の基本設計に入る予定です。
また、新会館をこの場所に建設することは、既にある中央公園、潤井川大橋の景観に加え、文化の殿堂としての新会館が新たな景観として組み込まれることになります。中央公園一帯は、富士に映る一体性のある文化ゾーンとして形成され、潤いのある都市創造に向けての第一歩を踏み出す契機となり得るものです。
一方、都市の文化の創造に寄与する高等教育機関誘致は、昨年10月に(仮称)常葉学園富士短期大学の誘致の決定をみました。
短大用地についても地権者の御協力により市内高山地先に確保することができました。
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( 写真説明 ) 3月定例会で施政方針演能を行う渡辺市長
活力ある都市へ産業振興基盤を整備
本市の地場産業である紙・パルプについては、円高による影響から好調を維持しています。しかし、最近の経済社会の国際化、自由化への動向を踏まえて、産業のイノベーション(革新)をさらに進めることが必要です。
ふじ21世紀プランにおいても本市産業の先端技術化、高付加価値化、ソフト化、情報化、文化化といった産業の高度化が挙げられ、特に既存産業の質的改善を緊急の課題としています。
こうした中で、富士市における公的研究機関である県の製紙工業試験場が(仮称)富士工業技術センターとして実現します。場所は斎場の隣地に決定し、新年度には基本設計に入る予定です。
また、住工混在地域の解消を目指す工業団地として、富士グリーン団地を計画してきましたが、これも関係者の御努力により、9業種17社の参入が決定しました。
いよいよ新年度には用地買収と造成に入ります。
一方、21世紀に向けた工業基盤の整備と工業振興を図るため、富士南麓地域有効利用可能性基礎調査を静岡総合研究機構に委託してきました。自然と人間の共生を前提とした富士南麓地域の有効利用の可能性が報告されると思われますが、報告内容を真剣に受けとめ、具体的な方策について検討を行ってまいります。
富士愛鷹山麓のあるべき姿を調査
前項で述べた富士南麓地域有効利用可能性基礎調査の基本となる視点は、富士南麓の良好な自然環境の保全が基調です。22万市民が、快適で安全な社会生活を営み、活発な経済活動を展開していくためには、富士愛鷹山麓のかけがえのない自然環境を適正に維持し、次代に継承していくことが必要です。
これまで、昭和50年に「富士市の自然環境の保全と緑の育成に関する条例」を制定し、市民の皆様とともに、自然環境の適正な保全と緑の創出に努めてまいりました。
しかし、時は流れ、当時整備されていなかった自然環境の保全のための法体系や指導基準が整備されるとともに、土木工学の発達等により、環境を良好に保全する手法も開発されてきています。
こうした状況は、最近の全国的な開発ブームを引き起こし、本市にも波及しつつあります。このため、再度、富士愛鷹山麓地域の環境管理のあり方について、問題が投げかけられています。
このようなことから、21世紀に向けて、富士市のまちづくりに必要な富士愛鷹山麓における土地利用事業について、その総量的な許容の範囲を科学的に分析し、自然環境の保全と利用を前提とした環境管理計画の必要性を認識するものです。
このため、新年度から2か年継続事業として、この計画の策定を進め、自然環境のあり方を多角的、科学的に考察しながら、富士愛鷹山麓地域の環境のあるべき姿を明確にしていく所存です。
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( 写真説明 ) 2か年をかけて富士愛鷹山麓地域の環境を調査
( 写真説明 ) 誘致が決定した常葉学園の本部(静岡市)
( 写真説明 ) 新富士駅と東名インターを結んだ源平橋