放射線科
在籍医師
- 医長: 竹永 晋介
はじめに
「放射線科」と聞くと、一般の方は、いわゆる放射線治療を専ら担当する診療科であると認識される方が多いと思われます。このことは医学生・初期研修医の諸君においてもあながち例外ではないとおもわれます。
伝統的には、放射線科は放射線治療科とほぼ同義でありましたが、近年の画像診断機器の飛躍的な発達により、放射線科は放射線治療のみならず、医療画像全般の実施・診断、さらには画像を利用した疾患治療(Interventional Radiology; IVRと略称します)を担当する診療科へと変貌しました。
特に、IVR領域においては、従来手術でしか治療できなかった疾患に対して、画像診断に基づいた治療計画の下で、カテーテルという細い管を血管に挿入して直接病巣に薬剤を注入したり、病巣そのものに管を差し込んで病変を焼き切ったりする治療が日常的に行われ、手術と同等以上の治療成績が得られています。さらに、このIVR治療は従来の手術と比較して、患者さんの体に与える負担が極めて軽微であるという大きな特徴があります。
診断機器にしても、放射線を使わないMRIや超音波検査は画像診断の大きな柱です。
これらの意味で、『放射線科』という名称は、診療内容の実態にそぐわない状態となっています。実際、画像診断科や画像診療科という診療科名を標榜している施設も増えてきています。
われわれ放射線科医は、日常業務を楽しみながら、また、ある時には緊張しながら充実感を十二分に感じつつ行っています。
以下、当科の現状並びに展望を次の三つの部門に分けて概説致します。
画像診断部門
画像診断は極めて面白く、かつ医療の安全性を高めるのにも役立つ。
われわれの目標: 医療の安全性を高めるために疾患の正確な診断を行うこと。これに基づき、適切な治療方針を主治医に呈示すること。
- 概要
昨今、マスコミ等で、医療に対する信頼を揺るがすような事件が多数報道されています。
このような医療不信を醸成する素地として、いわゆるself-referral(各臨床科内のみあるいは各主治医のみが単独で意思決定を行い、診療行為を行う状態)の問題があります。
医療において間違いや事故を犯さないことは、あり得ないということが明らかなことであり、この認識の下に、医療の安全性を担保するシステムが必要と考えます。
その試みのひとつとして、最近喧伝されているのがセカンドオピニオン(主治医のほかに、当該疾患を専門とする臨床医の意見を仰ぎ、診療方針決定に役立てること)であり、これは、主として基本となる治療方針決定に関与する役割を有します。
一方、病院内で行われる診療全般についても安全装置が必要です。ここで大きな役割を担うことが可能であるのが、放射線科医(画像診断医)および病理医です。なぜなら、各臨床科の縦割り組織の中で業務の性質上全科に日常的に関与するのが放射線科(画像診断部門)と病理診断部門であるからです。
放射線科医(画像診断医)が画像診断を担当し、病理医が全ての臨床検査や病理組織診断を担当することは、診療行為の内部チェックシステムとなり、医療の安全性を担保する装置として働くと考えられ、このことは、欧米では既に確立・実践されている事実です。また、病理診断部門・画像診断部門が確立していない病院は、欧米では教育病院(修練中の医師を教育する機関としての役割を有する病院)として認知され得ないことも常識とされています。
すなわち、全ての医療画像が、主治医以外の画像診断を専門とする画像診断医によって評価・診断され、画像診断医によって診断報告書が主治医に対して発行される。これを主治医が批判的に検証しつつ診療活動の参考にすることによって、医療の安全性を高めようとするシステムです。ちなみに、欧米では画像診断医のことをDoctor’s DoctorやDoctor of Doctorと称することもあります。
また、画像診断医の重責に鑑みますと、診断報告書の質は主治医のニーズに応えるものでなければならないのは勿論であり、画像診断医は医師として活動する限り、不断の学習・研究活動を続けてゆかなければならない立場にあります。
他方、わが国においては上述のような画像診断部門の確立はいまだ達成されていません。これは、歴史的経緯や画像診断医のman-power不足に起因することですが、医療の安全性を担保するため、また、医療不信を少しでも緩和するために緊急性のある課題と考えます。
当科においてもこのような考え方の下に、頭の先から爪先まで、全ての画像診断を担当する気概を有しますが、臨床各科の協力により、現状の常勤放射線科医2名体制にて実行可能な範囲の画像診断業務を行っています。単純写真撮影、CT撮像は診療放射線技師の当直体制の下に、24時間施行可能な態勢が整っています。診断医も24時間態勢で緊急検査に即応する態勢をとっています。
われわれ放射線科医は当病院の診療レベルの維持・向上を担っているという気概をもって日々診療に当たっています。 - 診療内容
a)画像診断
院内で撮像されたすべてのCT、MRI、RI、マンモグラム画像の診断。- 心臓・産科領域を除くすべての領域の超音波検査の実施・診断(腹部、乳腺、頚部、その他表在臓器、軟部組織)
- 心臓領域を除くすべての血管造影検査(IVR部門でも後述します)
- 読影依頼のある胸部・腹部単純写真、消化管造影診断
拾い上げた異常所見が示唆する疾患を複数想定し、患者さんの背景因子や血液検査データ等ともつき合わせて推理し、鑑別診断を行ってゆきます。このプロセスは非常に面白い作業であり、全く飽きることがありません。われわれ画像診断医は嬉々としながら毎日画像診断に浸っている状態です。
当該疾患自体の病態生理、診断・治療の理解がなければ適切な診断に達することは困難であり、われわれ画像診断医は、画像の勉強とともに、疾患関連の知識を増やすべく日々努力しています。
さて、画像診断にて疾患の確定ないし推定ができた場合の次のステップは、適切な治療方針の呈示、ないしは次に必要な検査の呈示を行うことです。このためにも当該疾患に対する知識・理解が決定的に重要です。
呈示した治療法が主治医や患者さんの意思に沿うものであり、しかもその治療法がIVR部門で担当しているものであるならば、われわれ放射線科医が自ら施行することとなります。
当院は大規模市中総合病院であり、あらゆる疾患の患者さんが訪れます。このため、若い修練中の放射線科医や画像診断を勉強したいと考えている諸君にとっては、教材の宝庫といえます。常勤の画像診断医の診断能力も高く、後輩諸君への指導意欲もきわめて旺盛です。よって、当院は画像診断領域の修練を希望する諸君にとっては、きわめて理想的な環境といえます。
手不足のため、現在は担当できていない消化管造影検査、内視鏡検査等も、希望すれば十二分な症例数を経験することが可能です。また、これらの検査は、常勤画像診断医の直接指導の下でも行うことができます。これらの手技を身につけ、かつ読影力を養うことは、CT、MRI、RI、USの診断能力向上にも直接寄与するものでありますので、当院での研修は、さらに充実するものとなります。
b)カンファランス等による院内連携
臨床医からのコンサルテーションに応ずること、臨床各科とのカンファランス(症例検討会)を主催すること。
われわれ画像診断医は、画像診断のプロであると自負しています。臨床医の皆様に対して、より適切な診断報告書を呈示すべく日々研鑽しています。
臨床各科の医師が、われわれの報告書に疑問や不明な点に気づいた場合には、積極的に問い合わせをしていただくことが、われわれの診断能力をさらに向上させることに繋がりますし、特に若い臨床医にとっては、われわれへのコンサルテーションを通じて画像診断の勉強もできることになります。
また、院内での意思疎通を図ることと、画像診断医が拾いきれない症例(画像検査がいまだ行われていない症例で、画像検査が診断・治療に必要な症例)の拾い出しのため、臨床各科とのカンファランスを主催することは、われわれ画像診断医の責務であると考え、積極的に行っています。
c)病診・病病連携
一般の診療所や小規模の病院では、当院で保有するような高性能の高額医療機器を完備することは困難です。
このため、主治医の依頼に応じて、これらの施設で診療を受けている患者さんに対して、当院が保有するCT、MRI、US等の画像診断を提供しています。
このことにより、当院の臨床科を受診せずとも精度の高い診断が行えます。われわれ画像診断医にとっても、検査症例数が増えることは、興味深い症例に触れる可能性が増大することにつながりますので、非常に喜ばしいことです。 - カンファランス・研究会活動
- 毎週水曜: 神経内科カンファランス
- 毎週木曜: 外科術前カンファランス
- 毎週: 小児科カンファランス
- 毎週: 婦人科カンファランス
- 2ヶ月に1回: 頭頚部腫瘍カンファランス
- 年2回: 院内CPC
- 毎月1回: 画像診断研究会(静岡県東部地区の画像診断医が集まる)
- 平成20年度実績 放射線科画像診断業務
- CT: 16,340例
- MRI: 5,208例
- RI: 1,260例
- US: 5,460例
- 血管撮影 : 1,139例
- 課題
画像診断部門の存在意義を上述のように考えるわれわれとしては、院内に発生したすべての画像につき、診断し、報告書を発行する態勢を構築することが当面の課題です。現在、診断医を増員する努力を重ねている状況であり、増員が達成されれば、人員に応じた診断領域の拡充を行う予定でいます。
臨床各科とのカンファランスも拡充してゆく必要があり、次年度中には臨床全科とのカンファランスを整備する予定でいます。
稀有な疾患や教育的な症例は、これまでも積極的に報告し、臨床研究は全国レベルの学会発表活動を行ってきましたが、これまでどおりの積極的な学会活動を継続していきます。
画像支援下治療(Interventional Radiology:IVR)部門
IVRは面白い手技であり、かつ患者さんを幸福にする。
われわれの目標: 的確な画像診断の下に、治療方針を立案し、適切な治療を実施する。常により良い手技を身に着けるべく修練し、新たな手技の開発にも挑戦する。
- 概要
近年の画像診断機器の飛躍的な発達により、放射線科は放射線治療のみならず、医療画像全般の実施・診断、さらには画像を利用した疾患治療(Interventional Radiology; IVRと略称します)を担当する診療科へと変貌しました。
IVRはa)診断のための手技と、b)治療目的の手技、に大別されます。
a) 診断のための手技
診断のためのIVRは、ある病変が発見された場合に、その組織を直接採取して病変の確定診断を行うことが必要な場合に施行されます。
具体的には、超音波画像やCT画像にて病変の局在を正確に同定し、組織を採取する器具(一般的には細い針が用いられます)を病変に誘導して病変組織を採取(組織生検)します。われわれが対象としている臓器は、脳・心臓を除くすべての臓器に及びます。
b) 治療目的の手技
従来は、手術でしか治療できなかった疾患や、適当な治療方法が存在しなかった多くの疾患が、IVRの発達によって治療可能となってきています。IVR治療の対象となる疾患の種類は、年々増加しつつあります。
対象となる疾患は、肝腫瘍をはじめとする実質臓器腫瘍、胆道腫瘍等の管腔臓器腫瘍、膿瘍等の感染性疾患、閉塞性動脈硬化症等の血管疾患、急性期脳塞栓等の脳血管疾患、臓器外傷による大量出血など多岐に渡ります。
これらIVR手技は手術と比較して、同等以上の効果が得られるばかりでなく、患者さんの体に与える負担も格段に少なくて済むのが大きな特徴です。 - 診療内容
各種の腫瘍性病変の確定診断のために腫瘍組織を採取します(生検といいます)。
腫瘍性疾患の場合には、画像診断に基づいた治療計画の下で、主に、カテーテルという細い管を血管に挿入したり、病巣に直接刺入して、病巣に薬剤を注入(エタノール注入療法、PEIT)したり、焼き切ったりする治療(マイクロ波凝固療法、PMCT)が主体となります。
最近認可された治療として、肝臓の腫瘍に対するラジオ波治療(RFA)があります。従来の肝腫瘍の治療成績を飛躍的に改善させる可能性を秘める本治療法は、当院でも平成16年4月から積極的に行っています。この治療も放射線科医がすべて行っています。
管腔臓器病変では、胆道腫瘍や胆道結石を扱うことが多く、超音波画像下に体表から針を刺し、鬱滞した胆汁を体外に導いたり、狭くなった胆道を拡張したりします。結石も破砕・除去することができます。
膿瘍等の感染性・炎症性疾患の場合にも体表からカテーテルを留置することにより、膿汁を排泄し、治癒せしめることが可能です。
歩行困難や足の壊疽の原因となる閉塞性動脈硬化症、あるいは透析中の患者さんの透析シャント不全の原因となる血管閉塞・狭窄については、血管造影の手技を駆使し、狭くなった血管をバルーンカテーテルによって拡張(PTA)したり、ステントと呼ばれる管を入れて血液の流れを改善させる手技を行います。
発症から間もない急性期脳塞栓(脳梗塞の一種)に対して、脳の血管を詰まらせている血栓をカテーテルを用いて溶かし、症状を改善・消失させることも可能です。
交通事故等での打撲により、肝臓や脾臓、腎臓などの臓器が破裂し、大出血をきたすことがあります。これらの臓器損傷には、出血源である破綻血管を詰め物で閉塞することによって止血・救命することも、現在では標準的な治療法になりつつあります。
以上、代表的な手技を例示しましたが、これら以外にも種々の疾患・病態に対してIVRは、患者さんの負担を最小限にした治療が当院で施行可能です。
当院は大規模市中総合病院であり、あらゆる疾患の患者さんが多数訪れます。このため、IVRを修練中の放射線科医諸君が、さらに技量を向上させたいと思う場合や、新たにIVRを学びたいと考える諸君にとっては、理想的な修練環境と言えます。当科常勤医師二人とも10年以上この分野での多数の症例経験があり、直接指導の下で、確実な手技を身に着けられることは間違いありません。 - 研究活動
IVR治療は、劇的な効果を最小限の患者さんの負担で達成できる領域です。この分野はまさに日進月歩です。われわれも常に新しい治療手技や手技の改良を模索しています。
学会活動としては症例報告のみならず、蓄積した症例から学べる点を臨床研究として報告し続けます。よりよい手技や結果は他の医師たちにも知ってほしく、われわれが関与する患者さん以外の方々にも、その恩恵を享受していただきたいというのがその動機です。
放射線治療部門
放射線治療医は放射線というメスを持った外科医とも呼ばれる。
- 概要
放射線(X線、電子線等の電離放射線)を用いて悪性腫瘍(がん)の消失を図る治療であり、一般に外科手術と比較して、患者さんへの侵襲が少ない利点を有します。但し、あらゆる悪性腫瘍に対して放射線治療が適応となるわけではなく、放射線治療が有効な疾患に対し、他の治療法(化学療法や手術あるいはIVR)などと勘案の上、適切と思われる症例に対して実施されます。
放射線は過量の場合には、健常組織に対しても障害を与えうるため、なるべく障害が起こらないような治療法および臓器機能温存がはかられるよう治療方法が決定されます。
放射線治療には、腫瘍そのものを根治させる目的で行う場合と、緩和医療として行う場合に大別されます。 - 診療内容
当院ではライナック装置(体の外から放射線を病巣に当てる装置)が稼動しています。東京慈恵会医科大学放射線科から放射線治療専門医2名が非常勤医師として勤務し、診療に当たっています。
但し、放射線治療全般を広く学べる体制は、現時点では構築されていません。特に、当院では施行できない小線源治療や内照射治療は、現在急速に発展を遂げつつある分野です。
このため、放射線治療を学びたい諸君にとっては、当院では十分な修練が出来ないことになります。
最後に、画像診断及びIVRを志す諸君に
当院は大規模市中総合病院であり、あらゆる疾患の患者さんが多数訪れます。このため、修練中の放射線科医や画像診断を勉強したいと考えている諸君にとっては、教材の宝庫といえます。常勤画像診断医の診断能力は高く、後輩諸君への指導意欲もきわめて旺盛です。常勤医は双方とも、年齢的にも現在最も脂が乗り切っている年代です。よって、当院は画像診断領域の修練を希望する諸君にとっては、きわめて理想的な環境といえます。
希望しさえすれば、消化管造影検査、内視鏡検査等も十二分な症例数を経験することが可能です。また、これらの検査は、常勤画像診断医の直接指導の下でも行うことができます。これらの手技を身につけ、かつ読影力を養うことはCT、MRI、RI、US等の診断能力向上にも直接寄与するものでありますので、当院での研修はさらに充実するものとなります。
常勤放射線科医の診断能力は総じて高く、特定の領域に偏らないいわゆるgeneral radiologyを実践しているが、それでもすべての領域にわたって一流の実力を保持しているわけではありません。われわれの診断レベルでは飽き足らない領域については、一定の期間、内地留学的に特定分野の実力者の下に学びに行くことも全く可能です。
われわれは、人手がたりないからなどという理由で修練中の諸君に不本意な業務(雑用など)をやらせることは、あってはならないと考えています。最も重要なことは、実力のある放射線科医を一人でも多く育てることであると思うからです。この点は、欧米の臨床研修システムの考え方に一致します。
IVRを修練中の医師諸君(現在の診療科を全く問いません)がさらに技量を向上させたいと思う場合や、新たにIVRを学びたいと考える諸君にとっても、抜群に理想的な修練環境と言えます。当院で施行できないIVRは事実上なく、症例も極めて豊富です。
当院は2次・3次救急センターも兼ねており、救急疾患についても画像診断・IVRの両面で十二分に経験することもできます。
症例報告・臨床研究も盛んであり、希望に応じて自由な学会活動が行えます。
さらに、希望があれば救急部・麻酔科を含めた各診療科での臨床主治医としての修練も可能です。
極言すれば画像診断・IVRは、放射線科医だけが習得すべきものではありません。もっとも重要なことは、患者さんのために適切な診断・治療をすることのできる医師が増えることと思います。
われわれは、以上のような素晴らしい環境を準備しています。当放射線科では意欲ある医師であれば、現在の診療科を問わずどなたでも受け入れる準備が整っています。長期研修以外にも、特定の領域を学びたい諸君(特に、開業前の準備など)や他施設からの短期・長期研修の受け入れも可能です。さらに、非常勤勤務での研修も可能です。
これらはいずれも、われわれの行っている診療行為の有用性・面白さを一人でも多くの医師に伝え、修得していただくことによって、一人でも多くの患者さんを幸福にしたいというわれわれの共通認識に因るものです。
われわれとともに勉強し、向上して行きたいと考える医師が一人でも現れることを期待します。とにかく、画像診断・IVRはきわめて面白いのです。この面白さを多くの諸君に伝えることができたらいいなと思っています。
当院・当科へのご連絡をお待ちしています。